初夏の味覚、さくらんぼ② 僅かな期間の極上果実、サクランボの「ンボ」って何?
こんにちは、「むすび」石原です。
「一斉に咲いて一斉に散る」四季移ろいの中、その時だけしか会えないものに、日本人は風情を感じてきました。
桜の花と同様に、サクランボも初夏だけの味覚。僅かな瞬間に、眩いまでの閃光を放ちます。サクランボの「ンボ」の由来や種のこと、サクランボをより知ると、より美味しく感じられるような気がします。
【 お伝えしたいこと!目次 】 |
1. 期間僅かの極上果実、さくらんぼ
1-1. 「さくらんぼ」の「んぼ」って何?
なぜ「さくらんぼ」という名前なのでしょう? 植物学分類は、「桜桃(おうとう)」と言います。
実際、農家さんは、「桜桃(おうとう)」と呼ぶことが多いようです。けれども、店頭に並ぶ時、皆が馴染む「さくらんぼ」の名札が付けられます。
なぜでしょう? サクランボの名前は、どこから来たのでしょう?
古から、「さくら」は、花を指しました。そこで、可愛らしく小さい「桜桃」が、「桜の坊(さくらのぼう)」と呼ばれたことが始まりとされます。
口にされるうちに、「う」が落ち、「の」が「ん」に変わり、「さくらんぼ」になったと言います。愛称で呼ばれる果実は、サクランボ以外に見当たりませんが、「桜桃」より美味しそうに感じますね。
1-2. 栽培が難しく、わがままな繊細果実
昨今、様々な果物が、季節を問わず並ぶようになりました。ハウス栽培や、貯蔵技術のおかけです。
しかし、サクランボは、6月上旬~7月上旬頃の僅かな期間に限られます。繊細な果実で、保存が効かないのです。
- 栽培も難しく、開花期は、たった一日の高温でも、低温(降霜)でも、雌しべ異常を発症し、結実に影響します。
- 雨も、濡れてしまうと、表皮の無数の呼吸穴から水分吸収し、実割れしまうことが多いです。商品にならず、カビ発生や病気の原因にもなります。
高温も低温も要らない。太陽は必須だけど、肥大期からの雨も要らない。サクランボ畑全体をハウスで覆って、頻繁なビニールの開閉作業も重労働です。けれども、手を掛けるほどに、美味しいサクランボが実ります。
2. 国内約100種、さくらんぼの品種
2-1. さくらんぼ界に君臨する「佐藤錦」
サクランボといえば「佐藤錦」。全サクランボ生産量の60%以上を占め、圧倒的な知名度を誇ります。
「佐藤錦」の歴史は、古く大正時代。山形県東根市の佐藤栄助氏が選抜・育種し、大正11年に初結実した品種です。
「佐藤錦」の血統は、父親が甘味強くも日持ち悪い「黄玉」。母親が硬めな果肉で酸味強く日持ち良好な「ナポレオン」。この2品種を交配し、食味高く、日持ち性を改善させた「佐藤錦」が生まれました。
糖度は、平均で16~18度と高く、20度超えも存在します。艶の良い鮮やかな真紅の果皮で、適度な弾力もある果肉は、豊富な果汁を含みます。微酸も有し、甘酸バランスに秀でる「赤い宝石」です。
2-2. 佐藤錦を狙う次世の品種「紅秀峰」
サクランボの品種は、国内に100種類ほどとされます。圧倒的存在の「佐藤錦」を交えて、改良された品種が多く、「紅秀峰」「紅さやか」「紅てまり」「大将錦」などがそれに当たります。
重鎮「佐藤錦」が、全生産量の60%以上を占め、以降、「紅秀峰」「高砂」「ナポレオン」と続きます。
今、1979年誕生の「紅秀峰」が広がり、2大品種になりつつあります。枯死危険が高く、栽培が難しいものの、「佐藤錦」の弱点(若干軟らかく、美味しほど短命)を補う存在として、注目されています。
可愛い見た目と、甘味と酸味の絶妙な味わいを楽しめるサクランボ。旬が限られる短命果実ですが、この時期にしか味わえない、この時期だけの味覚を存分に楽しみたいですね。
3. 未だ存在しない、種なしさくらんぼ
3-1. 食べさせて広げる、種子植物の戦略
種を取る手間なく食べたい。子供にそのまま食べさせたい。けれども、サクランボに「種なし」は、ありません。
そもそも、種と思っている硬い殻。実はあれ、種ではありません。
種子植物は、動物や鳥などに食べてもらい、糞とともに拡散され、生殖地を広げることが目的です。なので、消化管で破壊されては困ります。サクランボの種は、果肉の一部が殻化した内果皮の中で、硬く守られます。
現在、「種なし」を作る技術があっても、殻化した内果皮をなくす技術は、まだ開発されていません(梅や桃も、同じです)。技術は、日進月歩ですし、いつか「種なしサクランボ」が店頭に並ぶ日が、来るかもしれませんね。
▼ 観賞用桜と食用桜の違いや桜と日本人の長い関係など。こちらの記事も、合わせてどうぞ。
以上です。最後までお読みくださり、有難うございました。