世界有数の農薬大国、日本② 温暖気候や市場要求、農薬使用が減らない理由など。

世界有数の農薬大国、日本② 温暖気候や市場要求、農薬使用が減らない理由など。

こんにちは、「むすび」石原です。

日本は、世界トップクラスの農薬消費大国です。まず、知って欲しいことは、「日本で無農薬栽培は、とても難しい」ということです。

温暖湿潤の気候や市場の品質要求などが、その理由です。しかし、世界では今、オーガニック意識の高まりや、農薬規制の動きが進んでいます。農薬にまつわる色々を、綴りました。

【 お伝えしたいこと!目次 】



  1. 日本の農薬事情、消費が多い理由
    1. 生物が生きやすい、温暖湿潤だから
    2. 狭く密集する、農地集約農薬だから
    3. 緩い農薬基準、適用範囲が広いから
    4. 日本気質、几帳面で綺麗好きだから
  2. 消費者が変われば、社会が変わる
    1. 消費者の言動が生んだ、欧米の変化
    2. オーガニック大国へ、中国が変貌中
    3. 消費者の要望が現れる、売場の陳列

1. 日本の農薬事情、消費が多い理由

害虫のアブラムシを食べる益虫のテントウムシ
▲ 害虫アブラ虫を食べるテントウ虫、皆に棲みよい日本。

1-1. 生物が生きやすい、温暖湿潤だから

  • 日本は、無農薬栽培が難しい、暖かく湿った気候。

    多くの動物や植物が、密集しても、生存できる豊かな環境です。病害虫にとっても同じで、集まってきます。また農薬が雨で流れてしまい、散布回数が多くなってしまうのです。

  • 欧米は、病害虫が発生しにくい、涼しく乾いた気候。

    その証拠に、欧州では、コショウやトウガラシなどの香辛料が、育ちません。外敵がいないため、「辛味成分」で自身を守る必要がないのです。

もちろん、北海道と沖縄で違い、北欧と南欧でも違います。それでも日本は、欧米に比べて高温多湿な大地です。

国土の狭い国で盛んな農地集約型のトマト栽培
▲ 農地集約の典型、国土の狭い国々で盛んなトマト栽培。

1-2. 狭く密集する、農地集約農薬だから

日本は、国土が小さい上に、山岳地が広く、多くの人口を抱えます。

耕作地の狭い国は、ハウスの活用など、いかに収量を上げていくかが大事で、栽培技術を発展させてきました。

韓国やオランダなども典型で、国土の小さい国々は、トマトやキュウリなど、小さな面積でも収益の上がりやすい作物が、盛んに栽培されます。

ただこのような農地集約の農薬は、どうしても単位面積あたりの農薬使用量が、多くなってしまう傾向にあります。

参考:作物別 慣行栽培の農薬使用回数(トマト生産量全国1位の熊本県は、77回散布しています)。

田んぼへネオニコチノイド農薬のドローン散布解禁
▲ ミツバチの死骸が最多の田んぼへ、ドローン農薬散布。

1-3. 緩い農薬基準、適用範囲が広いから

  • 世界保健機構(WHO)は、2015年、除草剤「グリホサート」を、発がん性物質と指しました。

    この発表を受け、各国は、規制強化や使用禁止に乗り出しました。日本では、一番使われる除草剤です。米国から日本向け輸出小麦には、作物直接散布とも言われていて、食パンから残留農薬が検出されています。

  • ミツバチ大量死と因果があると言われる「ネオニコチノイド系農薬」3種が、EUで使用禁止になりました。

    フランスでは、さらに厳しく、2種を加え、主要5種で使用が禁止されました。逆に日本では、2016年、「ネオニコチノイド系農薬」のドローン散布が解禁されたのです。

見た目に劣るも実は美味しい証のツル割れりんご
▲ 肥大が早い個体で起こる、美味の証「ツル割れりんご」

1-4. 日本気質、几帳面で綺麗好きだから

几帳面で綺麗好きな日本人の気質は、素晴らしいです。

しかし、傷がついていたら遠慮します。変形も要らないです。虫食いなんてとんでもない。加えて、鮮やかで、大きくて、いつもの価格で、切らすことなく安定供給。

そうなると、作り手は、見た目が絶対になります。ちょっと過剰かもと思っても、虫を寄らせないため、生長を促進させるため、農薬に頼ります。

「綺麗で、大きく、整った容姿の品質要求に応えるため、農薬を多めに使う。」私たちの意識が、農薬の助長に少なからず加担しているのかもしれません。

2. 消費者が変わると、社会が変わる

飼育方法など識別番号が印字される安心の欧州卵

▲ 生産方法や生産者など、識別の番号印字が義務のEU卵。

2-1. 消費者の言動が生んだ、欧米の変化

農薬に向き合い、簡単でない中、あの手この手を駆使し、安全な作物づくりを目指す作り手が、少なからずいます。

私たちの健康だけでなく、未来の人々と環境の健康を気遣い、作物を作っていく。そんな作り手さんを、応援して頂けたら嬉しいです。

今、欧米では、農薬への反対や、オーガニックへの購買が、社会変化を生んでいます。政府を動かし、農薬使用を禁じる法律が、施行され始めています。

EUの卵は、有機や平飼い、生産者など、一玉一玉に識別番号の印字が義務付けられています。米国でも、ホルモン剤フリーの牛肉が、当たり前と言われます。

今や生産量世界3位で躍進する中国の有機栽培
▲ 中国の有機農産物、今や生産量世界3位・EU輸出量1位。

2-2. オーガニック大国へ、中国が変貌中

「中国産」と聞いて好意的な日本人は、少ないでしょう。けれども、EUへの有機農産物輸出1位は、中国です。

輸出のためだけに、有機栽培を増やす国家戦略と思いきや、中国は、世界3位の有機農産物生産国でもあります。

「国土が大きいから」だけじゃないです。日本では、全耕作地のうち「0.2%」に過ぎない有機栽培地が、中国では、3倍の「0.6%」もあります。

日中韓の農地面積当たり農薬使用量
出典:FAO「FAOSTAT」日・中・韓 農地1haあたり農薬使用量(2001~2018年の推移)より弊社作成。

現在の中国の農地当たり農薬使用量は、2014年をピークに上昇が止まりました。日本・韓国と同じように、下落を始めました。

何年後か、日本よりも中国の消費者の方が、よっぽど有機に対して明るくなっている未来が、訪れてしまっている可能性すらあります。

微生物の土壌分解が盛んで栄養豊富な有機作物

▲ 栄養にも優れる、微生物が生きる土壌で育つ有機作物。

2-3. 店頭の売場は、消費者の要望の現れ

「SDGs」とか、「サスティナブル」とか、騒がれる昨今ですが、日本の有機農業は、進んでいないです。

長い目で見れば、化学薬品は、悪循環です。土中微生物の減少だったり、耐性病害虫の出現だったり、より強力な化学薬品への傾倒だったり、持続可能には、なりにくいです。

店頭では、見た目重視、価格重視の作物が、圧倒的です。人によって最適解は、もちろん異なりますが、出来る限り、命や健康を守る食べものを選んでいきたいです。

農薬・化学肥料を抑えて作った作物は、活発な微生物が分解した、有機土壌で育ちます。栄養は、高くなります。そして、味も濃く、美味しいことが多いです。大地の活力をぜひ感じて頂きたいと願います。

▼ 日本の農薬消費量は、アメリカのなんと5倍!?こちらの記事も、合わせてどうぞ。


以上です。最後までお読みくださり、有難うございました。

コメントを残す