世界有数の農薬大国、日本① 農薬消費の現状や使用量統計、農薬の期待効果など。

世界有数の農薬大国、日本① 農薬消費の現状や使用量統計、農薬の期待効果など。

こんにちは、「むすび」石原です。

輸入食品は、収穫後(ポストハーベスト)に防カビ剤が散布されていたり、除草剤「グリホサート」が作物に直接散布されていたりもあると言われます。

けれども、「国産が一番安全」という認識も、変えていく必要があるかもしれません。世界有数の農薬大国・日本の現状や、農薬を使う理由など、書きました。

【 お伝えしたいこと!目次 】



  1. 農薬を使う理由、なぜ必要なのか?
    1. 農薬を使わないと、商品になり辛い
    2. 国の指針、農薬保護と規格品の奨励
    3. 効率とともに安心を生む、農薬効果
  2. 日本と世界、農薬消費の現状
    1. 農薬大国・日本、世界有数の消費量
    2. 生産上位県別、慣行栽培農薬散布数
    3. 安全と言うも、作手に委ねる取扱い

1. 農薬を使う理由、なぜ必要なのか?

高温多湿気候や市場品質要求で増える農薬使用量
▲ 温暖な気候や市場の品質要求、減らない農薬使用量。

1-1. 農薬を使わないと、商品になり辛い

日本の農薬使用量は、世界トップクラスです。作り手は、農薬に一番近く、農薬を一番浴びます。なのに、どうして自らを害してまで、農薬を使うのでしょうか?

  1. 見た目の基準で、農協は、作物の等級を決めます。
  2. ハードな農作業が厳しい、高齢化の現実があります。
  3. 病害虫が発生しやすい、高温多湿の風土があります。

作り手は、見境なしに、散布しているわけではありません。国や都道府県の指導を受けながら、必要であるから、散布しています。農薬もタダではなく、凡そ売上の7%を、農薬代に使っています。

農薬を使わなければ、出荷基準を満たす作物が育てづらいのです。市場の品質要求に応えづらいのです。

農薬管理指導士の助言指導で行う農薬散布
▲ 農薬管理指導士による指導の下で行う、農薬の散布。

1-2. 国の指針、農薬保護と規格品の奨励

国の考えの土台は、「栽培作物と自然植物は、全くの別物である」です。

  • 「栽培作物」は、外敵への防衛術をそぎ落とし(アクや苦味など)、収量や味覚(甘味)に特化し、育種・選抜した作物です。外敵に弱く、病害虫にとっては、格好の餌食です。だから、農薬保護の必要があります。
  • 「農薬取締法」で、安全を担保しています。使用には、種類・量・散布回数など、細かく決めています。都道府県の「農薬管理指導士」が、助言・指導も行っています。だから、安心して農薬を使って頂けます。
農薬不使用時における作物別の収穫量減少率
出典:農薬工業会「農薬不使用栽培時における、収量減少率」より弊社作成。

上表は、農薬を使わなかったら、どれだけ収穫が落ちるかという指標です。リンゴは、ほとんど収量がありません。

要は、「農薬を使って、栽培してください。農薬を使って、容姿を整え出荷ください」ということです。

特に気温の高い季節は全滅すらある害虫の被害
▲ 高気温の季節は、全滅すらあり得る深刻な害虫被害。

1-3. 効率とともに安心を生む、農薬効果

下記などの効果を得るために、農薬を使います。

  1. 人間に都合が良い作物は、虫にも好都合です。特に暖かい季節、活発に食べまくる、害虫を防ぎます(殺虫剤)。
  2. 葉枯れ、根腐れ、実の黒星病など、土中の微生物や細菌などを介してやって来る、病気を防ぎます(殺菌剤)。
  3. 除草は、過酷です。怠ると雑草との生存競争に負け、栄養を奪われます。除草の重労働から救います(除草剤)。
  4. 種なし葡萄を作ったり、稲丈を調整し倒伏を防いだり、結実を早め肥大を促します(生長調整剤や着果促進剤)。

農薬は、病害虫の恐怖からの「解放」という、代えがたい安心感をもたらしてくれる、効果を発揮します。

2. 日本と世界、農薬使用の現状

農地面積あたり国別農薬使用量の世界地図

出典:FAO「FAOSTAT」農地1haあたり農薬使用量(2018年)。

2-1. 農薬大国・日本、世界有数の消費量

「国産が一番安全」を信じる日本人は、多いでしょう。

しかし、残念ながら日本は、農薬漬けと言って良いほど、世界有数の農薬大国です。

FAO(国連食慮農業機関)調べでは、農地1ha当たり11.8㎏の農薬を使っています(2018年)。中国や韓国とほぼ近い、世界トップクラスの農薬使用量を誇ります。

農地面積あたり農薬使用量で見る農薬大国日本
出典:FAO「FAOSTAT」農地1haあたり国別農薬使用量(2018年)より弊社作成。

アメリカの農薬使用量は、ずっと少なく、なんと日本の1/5です。

欧州各国と比べても、オランダ3/4、フランス1/3、ドイツ1/3、スペイン1/3、イギリス1/4、スウェーデンに至っては、1/20です。

大規模な小麦やトウモロコシ栽培 vs 米栽培。病害虫が発生しにくい冷涼乾燥気候 vs 高温多雨気候など、単純に比較できませんが、これだけの差があります。

害虫対策が必須で農薬散布されたトマト
▲ トマトの消毒、増えがちな農薬散布は多雨地域の宿命。

2-2. 生産上位県別、慣行栽培農薬散布数

下表は、主要作物における、生産量3位までの「都道府県別 慣行栽培農薬散布回数(2021年)」です。

ハウス・路地、早播き・遅播き、促成・抑制栽培など、回数には若干前後がありますが、多い方を記載しました。

作物別都道府県別の慣行レベル農薬使用回数
▲ 作物別、生産上位都道府県の慣行レベル農薬使用回数。

この使用数を多いと捉えるか、妥当と考えるか。どちらにせよ、これだけの農薬を使っています。

農薬は、とても有難い効果があります。けれども、土壌を分解してくれる微生物も減らします。

土が痩せると、化学肥料に頼らざるを得なくなります。農薬耐性を持った病害虫の出現や、河川・湖沼の汚染リスクの可能性もあります。

生産者の判断に委ねられる農薬散布の使用方法

▲ 取扱使用法が有るものの、作手の分別に負う農薬散布。

2-3. 安全と言うも、作手に委ねる取扱い

農薬は、日々進化を続けています。狙った病害虫に、ピンポイントに効果を発揮するように開発されてきました。

人体にも、影響が少ないように開発されてきました。許容範囲の摂取量なら、問題ないと言われています。

  • しかし、がん、アレルギー、不妊、うつ、アルツハイマー、発達障害など、農薬と因果も指摘されています。
  • そして、農薬の扱いは、作手に委ねられています。取扱違反で「とちおとめ苺」から検出された基準8倍の残留農薬事件。散布下流域の「シジミ貝」から検出された残留農薬事件もあります。

農薬は、使い方を誤れば、生死に関わる「毒薬」です。出来る限り、少ない農薬の作物を選ぶようにしたいです。

▼ 高頻度で使用される日本の農薬は、なぜ多いのか? こちらの記事も、合わせてどうぞ。


以上です。最後までお読みくださり、有難うございました。

1件のコメント

コメント失礼いたします。
FAOの国別農薬使用量についてですが、
記事内で「大規模な小麦やトウモロコシ栽培 vs 米栽培。病害虫が発生しにくい冷涼乾燥気候 vs 高温多雨気候など、単純に比較できませんが、これだけの差があります」とありますが、
こちらのデータは米栽培に限定されたものですか?
FAOのデータは穀物、野菜、果物などすべてを含めたものと聞いております。

また、トマトの消毒と書かれた画像についてですが、こちらの記事のものですね。
「トマトにミルクをスプレーします。疫病やアブラムシから作物を保護するための安価でエコロジカルな方法」(和訳)
https://deccoria.pl/artykuly/porady-ogrodnicze/oprysk-mlekiem-na-pomidory-tani-i-ekologiczny-sposob-na-ochrone-upraw-przed-zaraza-i-mszycami-34-19079

白く見えるのは農薬ではなく牛乳です。
このような画像を農薬の問題の記事に引用するのは誤解を招くものと思います。

有機農法家 2024年 10月 07日

コメントを残す