ミツバチの減少② 原因は気候?農薬?絶滅してしまったら、起こり得る世界。
こんにちは、「むすび」石原です。
こんなに身近なミツバチに、絶滅危惧が迫っています。前回に続いて「ミツバチ減少」の第2弾です。
ミツバチは、世界食糧の約1/3、全作物種数の約7割の受粉を、支えていると言われます。
そんな極めて大恩のあるミツバチが今、苦しんでいます。生息地の森林減少、気候変動、寄生虫、そして最も大きい原因とされる田畑へ撒く農薬など、諸々綴りました。
【 お伝えしたいこと!目次 】 |
1. ミツバチが、もし消えてしまったら?
1-1. ミツバチ絶滅の4年後に人類滅亡!?
天才物理学者アインシュタイン博士は、「ミツバチが絶滅した4年後に人類も絶滅する」と話されたとか、、
真偽分からず都市伝説でありますが、それほどに私たちの生活は、ミツバチに多くを依存しています。
もし、ミツバチがいなくなったら、当然蜂蜜は、入手できなくなります。多くの野菜や果物も育たなくなり、世界の農作物の1/3が、失われる恐れがあります。
穀類の米、麦、トウモロコシは、ミツバチの受粉を媒介しないため、小さな影響かもしれません。けれども、農業の全体や、私たちの生活は、一変してしまうでしょう。
1-2. 野菜・果物・木実が、手に入らない
ミツバチは、果物、野菜、ナッツ生産に、とても重要な役割を果たします。
リンゴ、ミカン、イチゴ、ブドウ、サクランボ、モモ、ブルーベリー、メロン、ナシ、スイカ、カボチャ、タマネギ、キャベツ、キュウリ、アボカド、コショウ、アーモンド、クルミ、コーヒー、チョコレートなど。
これらの作物は全て、ミツバチの受粉に大きく依存しています。
私たちは、旬が分からないほど、一年を通し、様々な食材を食べられるようになりました。ハウス栽培とミツバチのおかげです。そのハウス栽培も、ミツバチがいなければ成り立たないのです。
1-3. 乳製品・油・綿も、入手困難になる
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乳牛も、ミツバチと密接な関係。
エサの大半は、ミツバチの受粉が必要なアルファルファやクローバーなど、干し草です。牛乳、バター、チーズも消えてしまうかもしれません。もちろん、牛肉や羊肉だって同じです。
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世界の油脂の半分以上は、植物油。
菜種、胡麻、大豆、落花生、紅花など、油糧種子の受粉も、ミツバチによって成り立っています。
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デニムやシャツ、コットン生地も同様。
原材料「綿花」の栽培も、ミツバチに依存しています。綿が世界から消えたら、化学繊維の衣服ばかりになってしまいます。
2. ミツバチの減少、原因は何か?
2-1. 帰巣能力が喪失する、ネオニコ農薬
決定証拠がなく、解明されていないものの、農薬は、大きな原因の一つと言えます。
特にネオニコチノイド系農薬は、人に毒性が弱くとも、ミツバチには、微量でも脳神経に作用し、方向感覚を失わせるとされます。帰巣できず、ミツバチの大量失踪(蜂群崩壊症候群)の要因と考えられています。
- EUは、ミツバチに影響あるとして、ネオニコチノイド系農薬3種を使用禁止にしました(2018年)。
- アメリカは、ネオニコチノイド系農薬を使った、農薬製品12種を承認から除外しました(2019年)。
日本でミツバチの死骸が最も多いのは、田んぼです。「農薬は、出来るなら使いたくない」農家さんに思いがあっても、斑点米の基準が厳しかったり、ネオニコチノイド系農薬を使わざるを得ないのも事実です。
2-2. 減少の一途、生息地の森林減少
日本の蜜源植物は、アカシア、栃、桜、菩提樹、ミカン、リンゴ、栗、レンゲ、クローバー、菜種、蕎麦など。
蜜源樹木の伐採であったり、栽培終了であったり。全国的に蜜源地は、縮小一の途です(農林水産省調べ 日本の蜜源面積:1980年370,700ha → 2020年107,500ha)。
- 日本は、国策で自然林をスギやヒノキに変えてきました。ただスギやヒノキ林は、エサが少なく、昆虫や動物が生息しにくい環境です。
- 蜜量多く、養蜂貢献の高いアカシアは、要注意外来種に指定され(在来種駆逐の加害は、確認されていませんが)、植樹できなくなっています。
ミツバチは今、花に在りつけ辛くなっています。ミツバチにとって、花蜜は、エネルギー源です。花粉は、アミノ酸・脂質・ビタミン・ミネラル源です。
2-3. 農業衰退と蜜源減少は、負の連鎖
田んぼ一面に広がった「レンゲ畑」を記憶してる方は、多いのではないでしょうか?
- レンゲ畑は、自生でなく、農家の栽培でした。春、レンゲごと田んぼを耕すと、良い窒素肥料になったのです。ミツバチは、そこでレンゲ蜜を得ていました。
- クローバーも同じ目的です。腐葉土を作る肥料として撒かれました。他にも、果樹園やハウスで、受粉交配を手伝う見返りに、ミツバチは、蜜を得ていたのです。
しかし、肥料は、化学肥料に代わり、耕作地は、放棄地や都市開発が進み、田園風景は、大きく様変わりしました。
ミツバチは、巣を出てから、目的の花以外にも、様々に寄り道し、野花の受粉を助けていたでしょう。野山の自然を作っていたでしょう。
2-4. 集蜜に困る長雨、植生変える温暖化
養蜂家は、開花の時期を見越し、女王蜂の産卵を促し、開花に合わせ、蜂群をピークにもっていきます。
昨今、温暖化によって、蜂群が育たないうちに、花が咲いてしまう事象が起きています。
また、雨の日にミツバチは、飛ばないため、花の季節に雨が続くと、蜜が採れません。北日本では、開花と梅雨が重なることが多くなりました。梅雨がないとされる北海道でも、雨が続く年が増えました。
台風の大型化や、水害も頻発しています。蜜源植物が倒れたり、枯れたり、植生も変化してしまったり。ミツバチの生息にも、当然波及していきいます。
2-5. クマに襲われ、シカに荒される蜜源
今、山野のシカ、イノシシ、クマなど、里地に現れ、農作物を食い荒らす被害が深刻化しています。
山にエサがなくなったから、里に降りてきます。山には、蜜源植物が多くあります。
山の草木が食い尽くされ、ハゲ山になってしまえば、当然、花も咲けません。ミツバチを始め、花粉を媒介する昆虫の減少に繋がってしまいます(クマは、ミツバチの巣を直接襲います)。
ミツバチが減ると、農作物だけでなく、山野の実りも減ります。それを食べる動物たちにも響いていくでしょう。生態系は、全てが密接に繋がっています。
2-6. ダニ、ウイルス、スズメバチの脅威
寄生ダニ・ウイルスも、深刻な問題です。ミツバチ減少の主原因の一つとされています。
一番の被害は、「ヘギイタダニ」という寄生ダニです。ミツバチの巣から巣へ広がります。体液を吸い、死に至らすとともに、ダニを宿主するウイルスまで持ち込みます。
寄生ダニは、巣に侵入し、幼虫と蛹(さなぎ)時から、体液を吸い始めます。同時に産卵し、約1週間で親ダニに成長します。ミツバチに寄生したまま外に出て、別の巣へ侵入し、繁殖を繰り返します。
さらに、アジア発の外来種「スズメバチ」の脅威もあります。防御策を持たない「セイヨウミツバチ」は、襲われると、成す術がなく、巣ごと絶滅させられます。
3. 様々な事象が繋がり起こる、自然現象
3-1. ミツバチと人間の関係、いつまでも!
人間は、「自然から独立する技術を持った」と幻想したかの如く、自然を変えてきました。ミツバチの環境へも、農薬散布や生息地減少など、苦境へ立たす原因を作ってしまっています。
ギリシャ神話の「最高神ゼウスは、蜂蜜とヤギの乳で育てられた」とされます。太古からミツバチと人間は、伝説が作られ、深い関わりがあります。
食べては、栄養の宝庫として、作っては、農作物の受粉の担い手として、大恩のあるミツバチたち。
たった1種のミツバチの喪失でも、生態系を崩してしまう恐れがあります。森林の減少、台風の被害、クマの襲撃、個別の事象に見えても、深くで繋がり、全体に影響を及ぼしているのです。
▼ 太古から続く、縁深いミツバチの消滅危機。こちらの記事も、合わせてどうぞ。
以上です。最後までお読みくださり、有難うございました。
3件のコメント
農水省の養蜂事業統計では養蜂家は微増・群数は横ばいとなっていますが、貴下のミツバチ減少論の根拠はどのようなデーターですか?農作物育成の為の農薬散布とミツバチ群保護の為の農薬使用との科学的な合理性はありますか?
食料難の時代がもうすぐそこまで来ていると思いました。
この問題をどのように解決するかは非常に難しいと思います。
近頃は田んぼの農薬散布はドローンが増えてきました。
田んぼにはいなごがほとんどみられません。
食物連鎖の崩壊は最後に私たち人間の崩壊に結びつきます。
大変参考になりました。