初夏の味覚、さくらんぼ① 観賞用桜と食用桜の違いや、古から桜と日本人の関係。

初夏の味覚、さくらんぼ① 観賞用桜と食用桜の違いや、古から桜と日本人の関係。

こんにちは、「むすび」石原です。

桜ほど、日本人にとって思い入れの深い花はないでしょう。古来より日本人は、桜の美しさや、可憐さに心を惹かれてきました。

田植えを告げる神が宿る木と崇め、はかなく散る命の短さに死生も考えさせられました。花も実も、その瞬間に見事な命を燃やします。桜の魅力や歴史、サクラとサクランボの違いなど、記しました。

【 お伝えしたいこと!目次 】



  1. 「さくら」と「さくらんぼ」
    1. 同じ桜でも違う、観賞用桜と食用桜
    2. ピンク一色、観賞用桜ソメイヨシノ
    3. 葉も芽吹、食用桜セイヨウミザクラ
    4. 食用桜の日本伝来は明治、何と最近
  2. 古から、日本人と桜の関係
    1. 桜の由来、田の神が降臨して宿る木
    2. 徳川吉宗が広めた、桜の堤防と花見
    3. 番外、色と並びに意味持つ三色団子

1. 「さくら」と「さくらんぼ」

6月中旬から始まる僅かな期間のサクランボ収穫
▲ 6月中旬~7月上旬、僅かな旬に輝く真紅のサクランボ。

1-1. 同じ桜でも違う、観賞用桜と食用桜

桜は、「バラ科サクラ属」に分類される総称です。西洋系と東洋系があり、2,000とも3,000種類とも言われます。

  • 簡単に、ざっくり2つに分けると、「綺麗な花を咲かせ、観賞するための桜」と、
  • 「立派なサクランボを実らせ、食用するための桜」に分けられます。

どちらも同じ桜ですが、1本の桜から、「春に綺麗なお花見をして、初夏に美味しくサクランボをいただく」と両方を都合良く楽しむは、なかなかに難しい。

とはいえ、どちらも僅かな期間に、眩いばかり閃光を放ち、私たち日本人に馴染み、愛してやまない桜です。

観賞用桜ソメイヨシノで映える世界遺産の姫路城
▲ 観賞用桜ソメイヨシノに彩られる、世界遺産の姫路城。

1-2. ピンク一色、観賞用桜ソメイヨシノ

日本で一番有名な桜と言えば、ダントツで「染井吉野(ソメイヨシノ)」でしょう。発祥は、江戸時代中期なので、桜の代名詞の割には、比較的新しいですね。

大島桜(オオシマザクラ)と江戸彼岸桜(エドヒガンザクラ)の交配種とされ、染井村(東京都豊島区駒込辺り)で、「吉野桜」と呼んで売り出されたのが始まり、同じDNAを持つクローンです。

花後に葉が芽吹いて、淡いピンクの大きな花を咲かせます。若木でも花づき良く、日本中を一気に席巻しました。

美しい「染井吉野(ソメイヨシノ)」も、真っ赤に熟れた実を生らします。けれども、マッチ棒みたいな、直径1cmにも満たない小さな実で、渋味が強く、美味しくありません。

花白く葉も同時に芽吹く食用桜セイヨウミザクラ
▲ 花白く、葉も同時に芽吹く、食用桜セイヨウミザクラ。

1-3. 葉も芽吹、食用桜セイヨウミザクラ

日本の食用桜のサクランボは、「西洋実桜(セイヨウミサクラ)」と言い、イラン北部からヨーロッパ山岳地が原産の桜の果実です。

花姿の外観は、白い花を咲かせ、葉も同時に芽吹き、少々地味です。淡いピンク一色で映え、観賞に秀でた「染井吉野(ソメイヨシノ)」などとは、かなり異なります。

世界的な歴史は、観賞用桜より遥かに古くて、まだ文字を持たない原始時代から存在したと言います。古代エジプトやローマでも愛され、食べられました。

現在、直径2cmほどで甘く大きい果実を付けますが、本来は、酸味の強い果実です。美味しく食べられように、幾度も品種改良されて、今の「佐藤錦」などのサクランボが生まれました。

明治時代にドイツから伝来し始まる日本の食用桜
▲ 食用桜が日本へやって来たのは、つい最近の明治時代。

1-4. 食用桜の日本伝来は明治、何と最近

日本へサクランボが伝えられたのは、観賞用桜に比べてずっと遅い、明治時代初期でした。1868年、ドイツ人によって北海道に「西洋実桜(セイヨウミザクラ)」が植えられたのが始まりとされます。

その後、100種近くが、世界各地から導入されましたが、適地検証すらされていない時代。

落葉後、7℃以下で約1400時間の低温期間が必要など、観賞用桜に比べ、生育要件を選びます。東北地方や北海道を除いて、上手く実らせることができませんでした(栽培南限は、山梨県とされます)。

現在、日本人の好みに合い、日本の気候に適したサクランボが、開発・栽培されています。7割強が山形県で生産され、北海道、山梨県、青森県と続きます。

2. 古から、日本人と桜の関係

田植え期を知り五穀豊穣を願う神様と崇めた山桜
▲ 開花により田植え期を知り、五穀豊穣を祈願した山桜。

2-1. 桜の由来、田の神が降臨して宿る木

「さくら」の意味を、ご存知でしょうか?

複合語である「さ・くら」が、有力です。「さ」は、「サ神=田の神」を指します。「サ神」が、山から里へ降臨し、座られた台木の鞍「くら」から、「さくら」と言われます。

  • 「サ神=田の神」は、稲の苗(早苗、さ・なえ)や、田植えの女性(早乙女、さ・おとめ)にも由来します。
  • お百姓さんは、「サ神」が降臨する月(皐月、さ・つき)に、山桜の開花で、田植え時を知ったと言われます。

古来より日本人にとって、桜は、春の訪れや田植えを告げる存在として、五穀豊穣や繁盛の神が宿る存在として、心惹かれる美しい存在として、命短かく散ってゆく死生を思う存在として、深い関係がありました。

隅田川や飛鳥山など東京の桜名所は徳川吉宗の作
▲ 隅田川や飛鳥山など東京の桜名所は、徳川吉宗の造作。

2-2. 徳川吉宗が広めた、桜の堤防と花見

日本は、急勾配な河川で、雨が多いです。梅雨や台風に耐えきれず、土手の決壊に悩まされ、住居や田畑の洪水被害は、日常茶飯事でした。

江戸時代中期、8代将軍徳川吉宗は、水害対策を目的に、川沿いに桜の植樹を進めました。

桜の木は、寿命が長くて強く、広く大きな根を張ります。土をしっかり掴み、土手の強化が期待できました。

また、お花見を奨励・大衆化し、桜が咲く地に人が集まるようになりました。大勢の人によって、新たなに人を雇うことなく土手が踏み固められたと言います。

春の桜・冬の雪・新緑の夏を表す三色団子

▲ 「春の桜色、雪冬の白、新緑の夏」を表した三色団子。

2-3. 番外、色と並びに意味持つ三色団子

お花見の席に持ち寄られ、欠かせない「三色団子」。桜・白・緑の三色は、昔から変わらず、意味があります。

ピンクは「桜咲く春」、白は「雪降る冬」、緑は「新緑茂る夏」の3つの季節を表しているとされます。

秋だけありませんが、「商い(繁盛)や、(いくら食べても)飽きない」というダジャレが込められているようです。

三色の並びも、桜が咲く順番を表しています。つぼみ(ピンク)に始まり、満開の花(白)、花後の葉桜(緑)だそうです。昔の方は、センスがありますね。

▼ 愛称で呼ばれるサクランボ、「ンボ」って何だろう? こちらの記事も、合わせてどうぞ。


以上です。最後までお読みくださり、有難うございました。

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