そうめん|職人の誇りと伝統、全国のおすすめご当地素麺の産地比較。
こんにちは、「むすび」石原です。
約1200年前、中国から伝わり、「日本の麺のルーツ」になったそうめんは、江戸時代まで、セレブの料理でした。
庶民に広まって以降、素麺づくりは、全国に拡大し、産地の気候や製法の違いによって、様々な「ご当地素麺」が生まれました。意外にも幅広い、そうめんの世界をどうぞ覗いてみてください。
【 お伝えしたいこと!目次 】 |
1.全国各地の素麺(そうめん)
1-1.全国各地へ、大和国・三輪発祥の素麺
「日本三大素麺」と聞いて、何処のそうめんを思い浮かべますか?
奈良県「三輪素麺」、兵庫県「播州素麺」、香川県「小豆島素麺」の3つの産地が、一般に挙げられます。
日本のそうめんは、奈良時代に遣唐使が、持ち帰った「索餅(さくべい)」、小麦粉と米粉を練ってねじり合わせ、油で揚げたお菓子なるものが、起源とされています。
大和国三輪(奈良県桜井市)へ、伝来して約1200年。今では全国へ広がり、特徴あるそうめんが、数多く存在します。
油を使わない白石温麺(宮城)、半乾きで丸めて乾燥させる大門素麺(富山)、色彩豊かな五色素麺(愛媛)、ひやむぎのような太さの半田素麺(徳島)など、様々あります。
1-2.産地の其々に宿った、素麺職人の誇り
全国には、そうめん職人たちが、誇りを込めて作り上げた、個性豊かな「ご当地素麺」が、それぞれ存在します。
気候が違ったり、小麦粉が違ったり、乾燥法が違ったり、手延べ麺や機械麺、容姿や細さも、様々です。
それぞれの産地に歴史があり、個性があり、そうめんの世界も、バラエティーが豊かで、なかなかに奥深いです。
全国の著名な「10産地」について、ざっくりと特徴を記しました。お気に入りのそうめんを選ぶ、一助になりましたら幸いです。
2.全国ご当地素麺、産地10選
2-1.白石温麺(しらいしうーめん) 宮城県
通常、手延べ素麺は、生地を延ばす際、乾燥を防ぐために油を塗ります。
白石温麺は、油を使わず、うち粉(澱粉)を振りながら製麺します。胃に優しく、病院食や離乳食にも重宝されます。
特徴は、約9cmという、麺の短さもあります。つゆハネが少なく、食べやすい。また若干太い麺は、茹で延びしにくく、小麦の風味がしっかり感じ取れます。
尚、「温麺」と呼びますが、温めるだけでなく、冷やしても美味しく、通年で食せます。
2-2.大門素麺(おおかどそうめん) 富山県
室町時代から続いた、能登の幻のそうめん「輪島素麺」から、薬売りの行商を通して、江戸時代に伝わったとされる大門素麺(「おおかど」と読みます)。
一般的な棒状のそうめんではなく、半乾き状態の麺(約2m)を丸めて、そのまま乾燥させた独特形状のそうめんです。
若干太めな麺で、油を使用しないことも特徴です。
丸髷(まるまげ)の独特の形状から、「丸まげ素麺」とも言われます。茹でる時は、麺を2つに割ることが必須です。
2-3.和泉素麺(いずみそうめん) 愛知県
一度乾燥させたそうめんを、加湿して、柔らかい半生状態へ「もどし」を行う、珍しい「半生もどし素麺」です。
この製法は、愛知県三河地方に夕方吹く、湿気を含んだ特有の風に由来します(「そうめん風」と呼びます)。
天日で干された麺が、「そうめん風」に当たり、柔らかく、絹衣のように、上品な風合いになったとされます。
尚、そうめんは、一般に冬に製造されますが、和泉素麺は、「そうめん風」に合わせ、夏に作られるのも特徴です。
2-4.三輪素麺(みわそうめん) 奈良県
「日本の麺のルーツを遡れば、そうめんに至り、そうめんのルーツを遡れば、大和国三輪(奈良県桜井市)に至る。」
三輪は、日本のそうめん発祥地で、播州(兵庫県)、小豆島(香川県)、島原(長崎県)への伝承など、多くのそうめん産地は、三輪素麺の流れを汲んでいます。
「細きこと糸のごとく、白きこと雪のごとし。」
三輪素麺の特徴は、強いコシです。コシが強いため、より細く、より長く、生地を延ばすことができるのです。
2-5.播州素麺(ばんしゅうそうめん) 兵庫県
日本三大そうめんの一つ、播州素麺(「ばんしゅう」と読みます)。主に、兵庫県たつの市で生産されます。
「揖保の糸」ブランドで有名で、そうめんの生産量が、日本一の産地です。
かつての播磨国と但馬国(ともに兵庫県)の国境を源流とし、瀬戸内海へ注ぐ、揖保川の流域。
水質が良く、良質な小麦と、赤穂の塩田で作られた海塩、そして比較的少雨で、天日乾燥に適した気候条件の下で、約600年の伝統を誇る、そうめん産地が形成されました。
2-6.小豆島素麺(しょうどしまそうめん) 香川県
江戸時代初期、小豆島の島民が、大和国の三輪(奈良県)に立ち寄り、そうめん製造技術を学び、島に持ち帰ったのが始まりとされます。
讃岐うどんの先祖とされる小豆島素麺は、モチモチで、弾力の強いコシが特徴です。
また、小豆島名産「胡麻油」を、製麺時、生地の練り込むことも特徴です。
酸化が抑えられ、保存性が高く、ほのかに黄色がかった色彩で、香ばしい胡麻の風味が感じられる小豆島素麺です。
2-7.五色素麺(ごしきそうめん) 愛媛県
今や全国各地で見られる「色つき素麺」ですが、元祖こそ、徳川家光公時代からの歴史を持つ五色素麺です。
道後温泉と並ぶ伊予松山の名物で、近松門左衛門や正岡子規などの文化人たちにも、賞賛を受けました。
白生地のそうめんに、梅肉(赤)、鶏卵(黄)、抹茶(緑)、蕎麦(茶)を混ぜた、鮮やかな五色のそうめん。
人工着色料を使わず、自然素材で彩られた、手延べそうめんです。
2-8.半田素麺(はんだそうめん) 徳島県
江戸時代、中国山地を流れる吉野川の中流、徳島県つるぎ町半田に広まった半田素麺。
他地域なら、「ひやむぎ」と呼ばれかねない、直径1.7mm近くある骨太そうめんです。
山間地の半田は、農業に適さないものの、吉野川を行き交う平田船によって、小麦粉、塩、油の入手が容易でした。
また、中国山地の清い伏流水と、山地から吹き降ろす冷風が、そうめんづくりに適し、伝統の味が育まれました。
2-9.南関素麺(なんかんそうめん) 熊本県
機械を一切使わない、「完全手作り」の手延べそうめん、量産できず、存在自体が希少なそうめんです。
豊臣秀吉公へのお茶献上で汲まれた水が湧く名水(ホタル)の里で、小麦産地であったこの地に、江戸時代初期、手延べ製麺技術が伝わりました。
南関素麺は、細さを極めた「白髪素麺」と、髷を結ったような「曲げ素麺」の2種があります。
伝統工芸の息遣いを感じさせ、「完全手作り」ならではの滑らかな喉越しと、コシの強さが特徴の南関素麺です。
2-10.島原素麺(しまばらそうめん) 長崎県
江戸時代初期の「天草・島原の乱」で荒廃し、島原は、ほぼ無人化しました。
その島原へ、そうめん名産地「小豆島」から島民が移り住み、そうめんづくりが根付いたとされます。
細さやコシの強さ、滑らかな舌触りなど、優れた品質を生む製麺技術を持ち、三輪素麺や他有力産地の下請けとして、発展してきた歴史があります。
現在、島原素麺ブランドを推進し、播州素麺に次ぐ、国内2位の生産量を誇る、そうめん一大産地になっています。
▼ 【商品】熊本県南関町産 完全手作り 手打ち 手延べそうめん 南関素麺。
▼ 【記事】素麺の歴史や製麺法について。こちらの記事もどうぞ。
▼ 【記事】完全手作り南関素麺について。こちらの記事もどうぞ。
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